次はわからない

岩田規久男『経済学的思考のすすめ』(筑摩書房、2011年)は、辛坊正記・治郎兄弟の著作をたたき台にして(というかボロクソにたたきまくって)、帰納的ではなく演繹的な思考法をすすめている。
なるほど、と思ったが、演繹的思考法をあらゆる場面で実践しようとすると、なかなか難しい。世の中で科学的とされているものでさえ疑わしくなってくる。なにかを決断する時に、いちいち演繹的思考法で考えていたらとても疲れるし、はたしてそんな人がいるのだろうか。いかに普段、帰納的思考法に頼って生きているかを思い知らされる。

小島寛之『使える!確率的思考』(筑摩書房、2005年)では、仕組みの見えない不確実性に対しては真似することに合理性があるとして、ギルボアとシュマイドラーの『事例ベース意思決定理論』を紹介している。「彼らは、『公理化』という方法を使って、この事例ベース意思決定の方法論を数理的に正当化している」(p189)らしい。そこまで難しいことはわからないが、これは「数理的に正当化された帰納」ということなのだろうか。